濃いテツ記事・BBC「Reality Check」

<イギリスのマスコミの「濃いテツ記事」>

 以前、「イギリスのメディアにいる25~50歳ぐらいの男は全員、鉄道に詳しいのって一体なんなの?」という話を紹介しました。そのときも書きましたが、イギリスのメディアの記事には時折、とてつもなく鉄分が濃いのがあります。今回はそれを紹介します。

 トランプ大統領の誕生に前後して、政治家の発言が事実に基づいているかを、メディアが検証して記事化する「ファクトチェック」という手法が話題になりました。

 イギリスBBCの「Reality Check」シリーズもその1つ。そのシリーズで取り上げられたのは、イギリス中部の大都市マンチェスターの市長(Andy Burnham)のこんな発言です。

Reality Check: Does the North get a raw deal on rail?
https://www.bbc.com/news/uk-41051440

「ChesterからManchesterへ(の列車)は、1962年よりも今(2017年)のほうが時間がかかっている」
 It takes longer today to get from Chester to Manchester than it did in 1962.

(BBCのサイトから)

 BBCは、これを過去の時刻表をもとに調べます。そして、検証結果は

正しい。でも途中の停車駅が増えたせい。他の大多数のルートは所要時間の改善もされている」。
 True, but the fastest service on that route now stops in more places. The vast majority of other routes have seen improvements in journey times

 チェスターへの所要時間は今は60分ですが、1962年の最速列車は56分でした。しかし、そのほかの主要都市は逆に1~20分、所要時間が減っているとのこと。所要時間以外にもいろいろな要素がある、と解説もしてくれています。

 この発言は、ロンドンに比べて、地方都市では鉄道の近代化(への投資)が遅れているという問題を投げかけるためのものでした。しかし、地元紙(こことか)ならばまだしも、BBCほどのメディアが、この発言をわざわざここまで調べるかなあ。当局に確認して間違いでなければ、それで終了な気がします。

 きちんと調べて、しかも調べたことを発表したい・・。これは趣味者のそれですよ。趣味としてならば、調べたいという気持ちはわかる。とってもわかります。
 実は、1962年の時刻表は、「Timetable World」というサイトでネットで見ることができます(素晴らしい!)。となると、わたしもやっぱり調べたい。自分で調べたい。

PASSENGER SERVICES TIMETABLE [London Midland Region] 1962 Sep
https://timetableworld.com/book_viewer.php?id=2&section_id=-1

このなかの「Table 84」にありました。実際に56分の列車はこれ。


 同じ区間の最新の時刻表はこちら
https://tfwrail.wales/sites/tfwrail.wales/files/2018-11/PTT%204%202.pdf

 2017年当時より1分短縮して最短59分になっています。この区間を走る列車は停車駅が統一されて、7駅に増えています。

 マンチェスターは、イギリスで2~3番目の都市で、日本で言えば大阪のような立ち位置。1962年よりも現在のほうが所要時間が延びているというのは、あり得るでしょうか

 1962年の日本の時刻表を調べてみました。関西本線の奈良-天王寺間は、その当時、準急「かすが」(気動車!)で32分(停車駅は途中、王寺のみ)です。現在はこの区間は、大和路快速で33分(途中停車駅は5つ)。
 ああ、まさに似たような事例ですね。こういうことなんですかねー?違うかな。

 ちなみに、この「Reality Check」シリーズの他の記事では、鉄道にとっての「定時」という概念が国によってまったく異なることを調べた「電車が時間通りっていつのこと?」という名作もあります。これもいずれ紹介しましょう。